パチンコ業界が新紙幣発行に伴う設備更新に追われている。新紙幣への対応は業界全体の重荷となり、廃業や整理が進む可能性がある。
新紙幣発行で設備投資が必須
- パチンコ店では、現金とメダルを交換する「サンド」と呼ばれる機器の更新が必要
- サンド1台の交換に約20万円、部品交換でも2万〜3万円の費用がかかる
- 1店舗当たり1000万〜1500万円の支出が見込まれている
パチンコ業界は新紙幣発行を前に、大規模な設備投資を強いられている。特に現金とパチンコ玉やメダルを交換する「サンド」と呼ばれる機器の更新が必須となっている。サンド自体の交換には1台あたり約20万円の費用がかかり、紙幣を識別するセンサー部品の交換でも2万〜3万円の費用が発生する。業界内では、1店舗当たり1000万〜1500万円の支出が見込まれているという。こうした多額の設備投資が、パチンコ店経営に大きな重荷となっている。
パチンコチェーン大手のダイナムは、沖縄県を除く全国397店舗で約19万5000台のパチンコ・パチスロ機を保有している。同社は新紙幣対応に膨大な改修作業と費用負担を強いられており、人手不足も深刻だという。ダイナムは6月末時点で82%、11月末時点で94%程度の台数の更新を終える予定だが、未対応の台の近くにはICカード券売機を置くなどの対策を講じる方針だ。
コロナ禍からの客足回復で一時は業績改善
- 2023年のパチンコ店の事業者数は前年比11.4%減の1336社
- 売上高は1.9%減で踏みとどまり、倒産件数も前年の34件から24件に減少
- コロナ禍からの客足回復で一時は業績が改善したものの、新紙幣対応で再び多額の設備投資が必要に
帝国データバンクの調査によると、2023年のパチンコ店の事業者数は統廃合などが進み、前年比11.4%減の1336社だった。しかし、売上高全体はコロナ禍からの客足回復もあって1.9%減で踏みとどまり、倒産件数も前年の34件から24件に減少した。一時は業績が改善する兆しがみられたものの、新紙幣発行に伴う多額の設備投資が再び業界を直撃することになった。
帝国データバンクの担当者は「新紙幣の発行でサンド購入などを迫られ、多額の設備投資が不可欠」と指摘する。実際に廃業を決めた事業者も複数出てきているという。同担当者は「資金繰りに余裕のある事業者は少ない」として、2024年は廃業がさらに増えて淘汰が進む可能性があると警鐘を鳴らしている。
人手不足と資金繰りの悪化が業界を直撃
- サンド機器の改修作業には専門の業者が必要だが人手が不足している
- コロナ禍で資金繰りが悪化しており、多額の設備投資は大きな負担に
- 廃業を決めた事業者も出てきており、今後さらに淘汰が進む恐れ
新紙幣対応に伴うサンド機器の改修作業には、専門の業者が必要となる。しかし、ダイナムの広報担当者は「改修業者の人手には限界があって更新作業は難しい」と嘆く。人手不足が深刻化しており、作業の遅れが避けられない状況にある。
さらに、パチンコ店の経営は長らくのコロナ禍の影響で資金繰りが悪化している。そうした中で新たに多額の設備投資を強いられることは、経営を一層圧迫することになる。実際に帝国データバンクによると、すでに廃業を決めた事業者も複数出てきているという。同担当者は「資金繰りに余裕のある事業者は少ない」として、今後さらに淘汰が進む可能性を指摘している。
まとめ
新紙幣発行に伴う設備更新は、パチンコ業界に多大な負担をもたらしている。多額の費用負担に加え、人手不足と資金繰りの悪化が業界を直撃している。一部の事業者は廃業を決めており、今後さらに淘汰が進む恐れがある。パチンコ業界は新紙幣への対応を乗り越えるため、経営の効率化や業態転換など抜本的な対策が求められそうだ。